次はいよいよEP8ですね。私はしばらく後になると思いますが、そのうちやります。いつになるかは不明。
今回は、そろそろ時期が時期ということで、何か書くことがあったかなーと思い返しながら考えたネタです。もうトリックだとか真相だとか細かい部分について書くことは特にない感じです。
魔術師の位階を登る物語
「うみねこ」には戦人が魔術師としての位階を登る物語という側面があります。ただのニンゲンだった戦人が魔法を理解し、魔術師になって成長していくお話ってことです。
位階っていうのは、特に作中では名言されていませんが、EP4のTIPSで
「領地を持つ魔女(=領主)<航海者<造物主」となっているアレです。戦人がどこまで位階を登れるのかは分かりません。ただ主人公がそういう道を辿る以上、作者竜騎士07氏が考える、人間が魔法をどう捉えどう関わるべきかということの答えは、EP7ラストの戦人の姿そのものなんでしょう。
戦人の物語
「うみねこ」は一応戦人が主人公の物語でした。その彼にはどのような変化があったでしょうか。
下位世界の戦人は基本的に変化しません。各EPを通じて連続しているのはいわゆる
メタ戦人の方です。記憶を保ち、経験を蓄積できるのはこっち。
戦人は魔女と魔法を頭から否定するところからスタートしました。ところがEP3あたりからベアトに情が移り始め、彼女がただ邪悪なだけの存在ではないことを知り、また彼女を苦しみから解放する(=殺す)ことに使命感を持つようになります。このあたりがEP4まで。
EP5からは、死ぬこともできず廃人のようになったベアトをいたわってます。彼女を安らかに眠らせるため、彼女自身を理解しようとしたものの間に合わず、ベアトはヱリカたちによって辱められながら殺されてしまいました。その後、無力感と失意の中で過去を振り返り、戦人はやっとベアトの心と、これまでのゲームの全てを理解するに至ります。ここで自ら魔術師となり、この世界の領主の資格を手に入れました。
EP6では自らゲームマスターとなり、ヱリカを打ち倒し、ベアトとゴールイン。ハッピーエンドな雰囲気に。次のEP7になるとほとんど出番なし。どこかに行ってしまったと思ったら、最後だけちょろっと出てきてますね。
航海者になった戦人
EP7の終わりで戦人が出てくるシーンは色々不思議なんですよね。どことも分からない世界で、どこからやってきたのかも分からない戦人が、小さな縁寿を慰める。これまでとはポツンと切り離されてしまっている感じがします。
引っ張る気もないので、サックリ私の考えを書きますと……これは、
航海者になった戦人が、カケラの海を渡り、EP7の霧江主犯でベルンが解釈した世界と繋がってる未来へと、縁寿を探してやってきたシーンです。
このシーンの戦人は六軒島の事件で生き残ったわけではなく、ちゃんと死んでると思います。この根拠は簡単で、この場面にこういう記述があるからです。
EP7:これが。縁寿に捧げる、最後のゲーム。
この戦人はゲームマスターになれる戦人……つまり魔術師になったメタ戦人です。
また、ベルンの霧江主犯解釈と繋がってる世界だというのは、この記述からの推測です。
縁寿「?テレビで、お母さんは悪い人たちと繋がりがあったって。……だから、うちのお父さんとお母さんが犯人で、みんなを殺したんだろうって?」
この縁寿がいる世界では、絵羽よりむしろ霧江が叩かれてるみたいです。EP3の後の世界とはちょっと違う感じで、EP7の後の世界だと考えるとしっくりきます。
縁寿が戦人の登場に驚いた様子がないのは、魔法の友達がいたことがあるからですかねー……あるいは普段から脳内戦人と会話してたのかもしれない。
今回は
「うみねこ」は戦人が魔術師としての位階を登る物語だという仮説を立てながら色々調べてたんですけど、この台詞を見つけてなんか泣きそうになりましたよ。ひぐらしの時の梨花を思い出しました。
戦人「探したぞ、縁寿……。」
戦人はカケラの海を渡ってこの縁寿を探したんです。まるでベルンがやるようにね。カケラの海を渡るのは、ベルンやラムダと同格の
航海者の力です。ただの領主にはできません。……どれぐらい時間がかかったのかは分からないですね。気の遠くなるような時間だったのかもしれないし、案外すぐだったのかもしれません。
EP5で魔術師として「領主」になった戦人は、EP7では「航海者」になっている。ただの人から始まって、魔術師の位階を登っているわけです。
なぜ戦人がただの領主から航海者になれたのかは、なんとも言えませんね。
ヱリカ+ベルンに勝ったからかもしれないし、ラムダの助力があるのかもしれないし、一回か二回かカケラ世界に行ったことがあるからかもしれない。EP6の後何があったのか、特に手掛かりもないように思います。
現実に過去から戦人がやってくるとか、そんな超常現象がアリかどうかは今更問題じゃないですね。
誰かが、戦人が魔術師として未来の縁寿を救いにやってくる物語を書いた……これでいいと思います。
そしてそれが
EP8なんでしょう。誰が書いてるかなんて知りませんけど。
EP4の縁寿が求めたように、別世界で戦人を生き残らせることはできなかったけど……それでも、魔術師として別世界の縁寿を救うことはできるかもしれない。こういう風にお話が繋がってる。
ここまで来た戦人なら、真里亞と現実世界との間に入って、その摩擦を上手く解決することもできるかもしれないですね。それは紗音にも熊沢にも、誰にもできなかったことです。
そういえばEP4のメタ視世界の真里亞はどこに行っちゃったんでしょうね。戦人と同じく航海者になったりしてるんだろうか。いつか造物主になるはずの真里亞は。……戦人が航海者になったのなら、真里亞もなってるような気がしますね。
航海者は自力では造物主にはなれない?
こっからあんまりいらない。
この物語が「魔術師の位階を登る物語」だとしたら、航海者になった戦人はそのまま造物主になるのかどうか。私はなれないと思います。同様に、ベルンやラムダもなれないんだろうと思ってます。
少なくとも自力では。EP4 TIPS:航海者たちは、自らの旅の終点は、造物主になることだと恐れている。
なぜ、上位の存在に進化することを恐れるのか、当事者以外には理解できない。
なることを恐れるというか、そもそもなれないのではないか……私がなぜそう考えるかというと、その答えはまぁ変なトンチみたいなもんです。つまりは……
「実際に“物”を“造る”ことができるのは、実在する生きた人間だけだから」です。空想の魔女が現実には何も影響しないのと同じです。他作品から出向してきただけのベルンやラムダがこっちで生きた人間として何かができるとは思えないんですよねー
造物主とは何か。航海者たちが神と呼ぶといわれる存在は何なのか。……これはまぁ脊髄反射的に、
「物語の作者のことだな」と察せられると思います。
「うみねこ」でいえば、EP6で
「本当の領主」と表現された人物がそれに当たるんでしょう。ベアトやEP6の戦人も領主ではあるんですけど、それはあくまで作中作における領主であって、その作品を書いた人物が“実際に”いるわけです。
EP6:それは、避けえぬ今日と言う日に至るまでの月日の数。
そしてそれは、……この世界の、本当の領主の、年齢。
EP3以降の偽書とされるものであれば、八城十八がそれに当たるかもしれません。ただ彼女の場合は二次創作者なので、造物主が一次創作者のみを意味するなら別の存在ということになります。二次創作者については、EP6で「無限の魔女」と表現されていたと記憶しています。
EP6縁寿:そして。……真相を知ったなら、誰もが無限の魔女になれるのかもしれない。
無限の魔女たちによる、無限の物語。
無限に弄ばれる、1986年10月4日からの二日間。
「実際に“物”を“造る”ことができるのは、実在する生きた人間だけだから」と言いましたが、EP4のTIPSには原初の魔女マリアは造物主になることを約束されている、と書かれています。真里亞は1986年に死んでいることになってるし、約束されてるといわれても彼女にはもう実際に物を造ることはできません。これでは矛盾してしまいます。
しかし、これにはちゃんと説明がつくんですよ。どういうことかというと、ボトルメールに
右代宮真里亞として署名があることがポイントなんです。実際のところ世間には「右代宮真里亞を名乗る謎の人物」がボトルメールの文章を書いた人物として認識されているでしょうけど、それでも一応は
真里亞の作品なんですよね、アレ。だから、ボトルメールが発見された時点で、真里亞は何者かの手によって造物主(=物語の作者)にされることが決定している……というわけ。……微妙か。まあいいや。
まぁそれでなくても、やっぱり「航海者は造物主にはなれない」というのは揺るがないと思います。
航海者は「無限のカケラの海を自由に渡り歩く魔女」とされています。「カケラの海」が何なのかにもよりますけど、可能性世界を自由に渡り歩くのはもう人間じゃないです。可能性を空想するとか、他人の空想=物語を読むだけなら誰にでもできますけど、ちょっとニュアンスが違う感じがしますね。生身で航海者になれる気があんまりしない。
真里亞や縁寿、紗音や熊沢は人間であり、ある意味では魔女でもある存在です。でも誰も“航海者”として明記されてません。作中ではベルンとラムダだけです。恐らくは生身の体を持たないであろう、純粋な空想の産物としてのこの二人だけ。
最初の話に戻ります。戦人が造物主になれるかどうか。……航海者になったメタ戦人は少なくとも自力では造物主にはなれないと思います。生身の人間ではないからです。しかし、生前の戦人が何か残してるか、もしくは他の生きた人間によって造物主にされるのはアリです。
そもそも、戦人が魔術師として行き着くところまで行けるかどうかはあんまり重要じゃない気がするので、どうでもいいっちゃどうでもいいんですけど。
*追記:2010/12/29 ベルンカステルの約束
航海者ベルンカステルは約束を守るかどうか。
小冊子「魔女達の七夕は甘くない」で、ベルンは幼い縁寿の前に現れている。ここで彼女は将来再び縁寿の前に現れ、その願いを叶えることを約束している。そして、実際に何年後かのビルの屋上で縁寿の前に現れている(EP3)。
小冊子は後付けかもしれない。しかし縁寿の前に再び現れたことで、今のところ
ベルンは約束を守っているといえる。では縁寿に最善のカケラを与えるという約束も、やはり守るのではないか。
(参考)
雛見沢村民集会2配布小冊子 : うみねこのなく頃に まとめWiki 問題はその約束の果たし方である。
ベルンは元々ニンゲンだったことが明記されている(EP2のTIPS)。つまり、戦人以前にニンゲンから航海者になった実例なのだ。なら、かつて自分がラムダに勝利しニンゲンから航海者になったように、
戦人を自分に勝たせることで航海者とし、自力でカケラの海を渡らせることもできるかもしれない。ベルンと戦人の境遇が似ていることも、同TIPSにに書かれている。
……だとしたら……やはりベルンによって縁寿の願いは叶えられることになるのかもしれない。ただし、ベルンの行いを“現実”に結び付けるなら、例によって縁寿の内面の出来事だとすることになるだろう。